今年は大変だ。

なかなか記事を書かない当ブログですが、

モタモタしてたら年が明けちゃいましたね。

 

まぁ、昨年は仕事面で色々ありまして。

 

仕事柄、国の政策には毎度振り回される事が多々あるのですが

昨年の制度変更はあまりにも酷かった。

 

自分は畜産業、和牛の生産者なのですが、突然の交付金の大幅なカットがあり・・・

まぁ、カットというよりは廃止に近いような内容ですけども。

 

交付金と聞くと、単にお金貰えて儲かると良く言われるのですが

頂く交付金の6割は自分が借りている農地の賃料、水路の利用権で消えます。

残り4割から牧草の肥料代、牧草の種子代なども支払うのですがこれで殆ど無くなります。

昔、国が農家に対し米を作れ作れと農地を整備させ米をたくさん生産させました。

しかしその後、米が余る状況が出てきて国は作付け作物の転換を進めました。

その際に、米を作りたいという農家に転作すれば奨励金を与えますよ、という政策を始め

その後、色々形を変えながら転作作物を作る農家にお金を落としてきました。

 

しかし、昨年その予算を大幅にカット、それまでギリギリで牧草を作ってきた

自分のような農家にとっては大打撃の政策が始まりました。

 

自分の場合、地域で作り手がどんどん減ってしまい、作り手の居なくなった農地を

なんとか保全、管理していかねばいけないと言うことから自分の必要とする面積の

3倍近い農地を賃貸し管理してきました。

 

牛専業ということで、畑作物や水田を作る機械も労働力も無く、

唯一、作付けができるのが牧草だった訳です。

 

お陰様?で今年は例年以上の努力をしたにも関わらず、大幅な赤字を出す結果に。

一千万ほどの額になり、年末はその処理に奔走しました。

 

既に今後の余力をほぼ使い果たした状況で、今後どのように営農していくのか

不安しかない、という状況です。

 

「だったら借りている農地を返せば良い」

 

となるのですが、それが出来ればどれほど良いか。

 

昭和60年代、米の生産が盛んになってた頃と比べると

農家の数は1/3程度に減少、しかし農地は減る事もなく、地域の若手で手分けして

賃貸、管理をしてきました。

 

地主さんたちも、後継者もいない中で、高齢になり、管理できない農地について

悩む中で我々現役世代がなんとか管理してきていた、そんな状況です。

 

そんな中、国はまた「米を作れば交付金をあげるよ」と言いだしました。

これだけ米が余って販売単価も下がる中で、です。

 

飼料米を作ってもいいよ、とは言うものの、仮に飼料米を作付けしたとしても

それを牛の飼料として使うにはそれ専用の機械を導入しないといけません。

必要な機械となれば、軽く見積もっても一千万弱の投資になります。

 

昨今、海外情勢の不安定さや中国などでの需要増加により配合飼料、肥料などが

暴騰しています。

実際、自分のところでも配合飼料の使用量を極力抑え、エコフィードやサイレージなどを

なんとか組み合わせてコストの低減に努めていますが、元のコストの上昇分が桁違いに大きく、

コスト削減の取り組みでは既に限界を超えている状況です。

残されたコスト削減の方法としては、妊娠鑑定が終わった牛達を放牧場に昼夜放牧し

牧草やサイレージを与えて極力牛舎での管理をしない、という方法です。

 

しかし、この放牧地も元はと言えば水田なのです。

自分の住む地域では農地の大半が水田のため、今回の国の政策変更の対象農地ばかりなのです。

 

飼料の国内生産を推める、という国の意見もあるのですが、その反面

採草地が激減するというデメリットについてはあまり考えていないようです。

牛の飼料の中心となるのが粗飼料、つまり牧草なのですが、国はその点をどのように考えているのでしょうか。

 

実際問題として、今回の政策変更による影響を全く受けない地域も多くあります。

つまり、そういう地域で牧草を生産し、それ以外の地域は他所から牧草を購入すれば良い、という

そんな安易な考えなのでしょうか。

 

この牧草に関しても、2年ほど前から価格がかなり上がっています。

輸送コストの上昇分がかなり大きく、今後はさらに生産地が減ってくる見込みもあることから

価格はさらに上がってくるでしょう。

 

和牛については全国各地でそれぞれ特徴のある和牛生産が行われています。

しかし、先に書いたような実情を踏まえれば、今後和牛生産が出来なくなる地域も

当然出てくる事でしょう。

 

和牛の場合は、全国各地でそれぞれ独自の取り組みによって品種の改良が日進月歩で

進められており、その結果として世界に類を見ない特徴のある食肉生産が実現しています。

そういった取り組みの多様性も今後縮小の一途を辿りかねません。

 

昨年行われた全国和牛能力共振会の閉会後、現総理が開催地で生産者の皆さんと

懇談をしたそうです。

その中で、国として支援する、という話をしたそうですが、

昨今の円安を逆手にとって、海外へ安く和牛の肉を売り込むチャンスなので

輸出向けの食肉加工現場などへの支援をする、とか何とか言ってたそうですが。

 

これ、裏を返せば後戻りできない金融緩和の弊害として招いてしまった過度な円安を

「良い円安」と釈明するための良い材料にされた感が否めません。

 

安ければ皆買うでしょう、という発想そのものが安易の極みであり

本来、その商品の価値を見極め納得できる人が見合った価格で買うべき物でなければならないのに

安く売れ、とはどういう了見なのでしょうか。

 

コスト度外視で売り続ければ、商品の価値も下がり、生産者は採算が合わなくなり・・・

 

 

ここまで書いて思ったのは

 

国は牛生産者を減らしたいだけなのではないか?と。

国の予算が紐づけられている農地を減らし、農家全体の数も減らしたいだけなのではないか?

これだけ兵糧攻めにしても耐えられる、生き残る農家、生産者以外は淘汰したい、

ただそれだけなのではないのか?と思えてなりません。

 

現総理の頭の中は至ってシンプルで

 

「北海道はじゃがいもと米だけ作れば良い。九州は牛を一生懸命生産すれば良い」

 

くらいにしか考えていないのではないのか?とね。

 

足りないものはどんどん輸入すれば国民の食卓は守れる、と。

 

 

最初に言ってた「富の分配」って言葉はどこへ消えたのでしょうかね?

 

資材や物価がこれだけ上昇する中、最近では消費税増税の話も俄かに現実味を帯びてきました。

企業に賃金のベースアップを求めていますが、それを実現するためには

企業は販売価格へその分を転嫁しなければならず、仮に一部企業が賃金を上げたとしても

それでは足りないような物価上昇に転じるという負の連鎖しか見えないのですが

どうなのでしょうかね?

 

中小で容易にベアが実現できる企業もそう多くはないでしょう。

内部留保をたっぷり溜め込んでいる大企業などは対処可能でしょうが

それこそ、富の固定化が進む、そう感じざるを得ない訳ですが、果たして。

 

本来、農家などは生産したものが適正な価格で売れていけば、通常レベルの生活は

出来るはずなのです。

消費者側も、そういった国産の農畜産物を適正な価格で消費できるような収入が得られていれば、この国の経済は健全に回転するはずなんです。

 

昔の日本ってそうだったように思います。

 

そこへ段々と海外の安いものが大量に流れてきて、消費する側も

それが当たり前になってしまった。

 

しかし、ひとたび海外からの仕入れが難航すると昨今のような大騒ぎになってしまう。

 

小さな島国ですから衣食の大きな部分を輸入に頼っていると、何か起これば

あっという間にパニックになる。

 

国はそういう状況を是正していこうともしない。

 

国民1人に10万円配ってるような愚策を続けるくらいなら、

国としての生きていける強さの再構築に力を注がねば遅かれ早かれ

この国の将来は無くなっていってしまうように感じてしまいます。

 

 

 

 

 

 

 

何を書こうと思ってたんだっけ?

 

 

 

 

あ、そうそう。

 

 

 

こういう状況で今年はワシも通常やらないような取り組みを色々やらねばいけない年なので

趣味だ何だというのは今年に限って言えば完全自粛、封印せねばならん、そういう

状況ということを書きたかったんですが。

 

 

それをやったからといって、今後この業界、先は全く見えません。

下手したら、来年の今頃は自己破産している可能性だって大いにありうる。いやマジで。

 

素牛の販売相場もさらに下がっていく可能性も高いので

現状コスト割れの状況がある中で、そんなふうになって行くとしたら

職業として成り立たなくなっていってしまうので。

一年で発生する負債も額がかなり大きいのでそんなの毎年続けてなんていられないし。

 

今年は色々、生まれてから初めて遭遇するような人生の岐路に立たされる1年でもあります。

 

内心、こんな1日も休みのない仕事なんてスッパリ辞めて

少ない給料でもいいから、毎週日曜はお休み、なんて職業に鞍替えした方が

いっそ楽かもね、とか思う事も実際あるんですけど。

 

 

まぁ、今年1年、やれるだけやってみます。